切削条件の計算に必要な情報
タップを機械で使用する場合には、以下の情報が必要です。
・回転速度(min-1)
・送り速度(mm/min)
・タップをおろす量(mm)
これらの情報を、加工内容やタップの仕様から導き出します。あわせて、使うタップの種類が加工内容に適応しているかどうかも確認しましょう。
タップ加工の内容
・ねじの呼び (ねじの種類、ねじ直径、ピッチ)
M10×1.5 (メートルねじ、ねじの直径が10mm、ピッチ1.5mmのねじ)
止り穴(貫通していないねじの事)
・加工深さ (ねじの呼びに対して何倍の深さか?)
15mmの有効ねじ探さ (ねじの呼びの1.5倍。1.5Dとも表現します。)
・被削材
S25C
・使用するタップ
EX-SFT (一般用スパイラルタップ)
・・・スパイラルタップは切りくずがシャンク側に排出される為、止り穴で使われます。
M10×1.5 STD(OH3)食付き2.5山
ツールNo.11621
切削条件の計算
回転速度(min-1)は、カタログの切削条件基準表の切削速度(m/min)を用いて計算します。切削速度(m/min)の条件範囲は、中炭素鋼でスパイラルタップでは、7~12m/min。まずは、下目から様子を見るために、7m/minとします。
▽参考資料: タップの切削条件基準表
※ねじの呼びがM10なら、工具径も10mmとして計算する。
上記より回転速度(min-1)と送り速度(mm/min)を計算します。
回転速度(min-1)
= 切削速度(m/min)× 1000 ÷ 工具径 ÷ 3.14
= 7(m/min)× 1000 ÷ 10 ÷ 3.14
= 222.93 ≒ 220(min-1)※計算しやすくするために数字をまるめた場合
送り速度(mm/min)
= 回転速度(min-1)× ねじのピッチ
= 220(min-1)×1.5
= 330(mm/min)
※タップは1回転1ピッチの動きが必要です。しかし、ユニファイねじや管用ねじなど割り切れない数字が出る場合もあります。数字を大きく丸めてしまうと加工誤差につながりますので、設備環境に応じて小数点以下を四捨五入し、整数にて考えて頂ければと思います。
タップをおろす量
さらに、タップ加工では図面指示の有効ねじ長さを満たすために、加工深さを計算する必要があります。
今回の加工内容からタップ加工深さを計算すると・・・
= 有効ねじ長さ + タップ食付き部長さ + 突出しセンタ長さ + 1ピッチ(余裕分)
= 15mm + 3.75mm(ピッチ1.5mm×タップ食付き長さ2.5山)+ 0mm(突出しセンタ無し)+ 1.5mm
= 20.25mm
この加工深さを行えるように、下穴の深さを確認しましょう。
ドリルで下穴を加工する場合、下穴径の深さがどれだけ必要かを確認しましょう。ドリル先端角の部分の長さは工具径のおおよそ30%が目安です。ある程度、余裕をもっておくことをおすすめ致します。
タップ種類によって、突出しセンタがあるものと無いものがあります。
カタログ製品ページの寸法表より、突出しセンタの有無が確認できます。
※タップ加工深さを考慮し、下穴深さは余裕をもって確保することをおすすめします。
下穴径は大きめで、底当たりもしていないのに、タップの欠けや折損が発生する場合は、切削条件から切りくずの形状の改善をご検討ください。タップは1回転あたりの送りが決まっている為、回転速度のみの調整となります。