切削工具のコーティングとは、母材のじん性を活かしながら表面に硬さを付与するためのものです。
切削工具における「硬さと靱性」と「コーティング」
- 工具母材の歴史
工具には、「熱に強く、硬くて、粘い」性質が求められる。耐熱・耐摩耗性を追求する中で、高速による発熱でも切削が可能な「ハイス」、非常に硬く耐摩耗性に優れる「超硬合金」、そして金属より軽く、熱に強く硬い性質を持つ「セラミックス」、セラミックスと金属の複合材料の「サーメット」などが開発された。
- 過酷な重切削
母材の硬度化により、軽切削や仕上げ切削 に対する工具の性能は大幅に改善したが、過酷な重荷重切削 に対するじん性が不足する場合が必要となった。
- じん性不足をコーティングで補う
「硬さ」と「じん性」は反する性質であり、両方を兼ね備えた単一の物質は存在せず、高能率加工に必要な工具には、硬さと欠けにくさの両立させる方法として、じん性を持つ母材(内部)に、硬さを持つコーティング(表面層)を施す方法が開発された。

- 「硬さ」が高いほど摩耗しにくいが、欠けやすくなる性質を持つ
- 「じん性」が高いほど欠けにくいが、摩耗しやすくなる性質を持つ
- 欠けても性能を維持できるコーティング
コーティング自体も硬ければ硬いほど、もろく欠けやすい性質を持つ。最近のコーティングには、「硬ければ硬い程よい」ではなく、「欠けても性能を維持できる」仕様が開発されている。「欠けても性能を維持できる」仕様が、異なるコーティングを幾重にも重ねた「複合多層コーティング」となる。

▽参考資料: コーティングの種類 と 性能
- 複合多層コーティングはサーマルクラックに有効
クーラント使用時の急激な温度変化により、コーティングに割れ「サーマルクラック」が生じる場合があり、複合多層コーティングは、サーマルクラックに対して有効な仕様である。
▽参考FAQ: オーエスジーの工具の最新コーティング
コーティング付き工具を使用する際の注意点
コーティングは、あれば良いというものではなく、加工内容によっては、コーティングが悪影響を及ぼす場合がある。ノンコートの一般用タップにTiNコーティングを施した結果、切りくずのボリューム大きくなり、噛み込みが発生した例がある。
- 工具設計において考慮されている切りくず排出性
工具は、切削から切りくず排出までを含めて設計されており、加工に応じて工夫された仕様を持つ。
タップ、ドリル、エンドミルなどのコーティング付き工具でも、切りくずがコンパクトになる仕様が組み込まれている。
- 工具選定で重要なポイント
工具選定では加工内容を確認し、使用する工具が被削材に適応していることを確認することが重要となる。
- ステンレス用やチタン合金用など、被削材専用品から選定する
- カタログ記載の対応被削材を基に選定する
- オーエスジーでは、多様な被削材や加工条件で優れた機能を発揮する汎用性の高い工具シリーズとして「Aブランド」製品をご用意。
コーティング膜の硬さの単位
- HVはビッカース硬さ
- GPaはナノインデンテーション法による硬さ
※GPa表記は、薄い膜厚に適した膜の硬さ測定が可能
▽参考FAQ: 工具のコーティングの性能が知りたいが、どこを見ればよい?
▽参考FAQ: 切削の基礎のまとめに戻る
▽WEB学習教材:eラーニングスクール
▽有料講習会:テクニカルセミナ